放送局での仕事

今回は、私が一番長く従事した放送局社員時代でのお話です。
しばらくお付き合いください。

私は航空無線の記事でお話したように大学卒業後は国交省航空局で航空管制技術官
として働いていました。
その後縁あって放送局で働くことになります。

実は私が持っている無線従事者の資格は航空無線でも必要ですが
放送局でも必要な資格なのです。

放送局は国から放送免許を与えられている認可事業です。
免許の更新もあります。
その免許の条件の一つとして無線従事者の資格を有する社員がいなければならず
退職などで欠員が出たため声がかかりました。

 

技術職として入社しました。

放送局は、番組を制作して、電波に載せ、お茶の間にお届けするのが主な内容です。

そして様々な職種があります。
一般的には、アナウンサー、カメラマン、ディレクター、プロデューサー等が思い浮かばれるのではないでしょうか。

しかしそのほかにも放送局にはハード面を支える、技術職はたくさんあります。
私は電波を送る送信所とカメラマン、主調整室(マスター)、副調整室(サブ調整室・番組を作るスタジオ)、中継業務を経験しました。


(生中継などで使用する中継車)

この中で、一番長かったのが中継業務で、テクニカルディレクター(TD)として番組の生中継に携わりました。

ある会議に(郵政省電波管理局の会議だった)出席した時に、当時の郵政省の偉い方が、
冒頭あいさつで
・良いプロ
・良い波
・良いエリア
とお話しされていたのを憶えています。

・良いプロとは
良いプログラム(番組)を制作してください。

・良い波とは
質の高い電波を送ってください。

・良いエリアとは
日本全国津々浦々、地上波を行き届かせましょう。難視聴区域の改善。

この話は今でもよく覚えています。

 

中継業務では、現場からの伝送業務(マイクロ伝送、SNG伝送)が主な仕事です。
この中で、SNG伝送(地上3万6000Km上空にある衛星中継局)で電波を送り、本社まで届ける)は楽しかったです。

都会のビルの間からでも、どんな電波も届かない、山奥からでも、空が見えれば(衛星中継局は見えませんが)
生中継でお茶の間に届ける事が出来ます。

箱根駅伝中継は、これの延長上にある、技術的にはとても難しい伝送業務です。

 

何よりも楽しかったのは、中継業務でいろいろな所に行けて、その場所でいろいろな方々にお会いできた事がなにより楽しかった事で、じぶんの勲章ではないかと思ってます。

例えば、
裁ちばさみの職人さんの中継。
手作りで、鉄を焼いて、打ち、たたいて、磨く。
この中に職人さん魂があるのです。
二枚の鉄の刃が、布をナイフのように切る。すごい事です。
現場では、二枚の刃にわずかにすき間があり、それが切れる事を職人さんの親方から聞き出し、
カメラマンとわずか1ミリにも満たないすき間をどう見せるか、奮闘しました。
工夫して、そのわずかなすき間を撮影する事に成功、リアルタイムで映すことが出来ました。

 

そうそう、始末書もんの危機一髪の生中継もありました!

ある有名歌舞伎俳優のお父様が亡くなられた時に、急遽、葬儀の生中継が入りました。
午後のワイドショーに生中継で葬儀の様子を放送するというものです。

この時の生中継は、今の自分がないくらいの大変な思いをしました。

テレビ中継の乗っかり(入る)直前に映像が切断してしまったのです。
つまり、モニターは真っ黒。
映像など出てきません。

もうスタッフ一同パニック。

あろうことかカメラケーブルが断線していたのです!!!

原因究明など悠長な事はやってられません!

急遽予備にあったケーブルを使い中継現場から中継車まで延々300メートル道路に張替え、

そして

張替え終わって超特急で中継車にドッキング!

直後、生中継に乗っかり(開始)

カウンダウンが始まり、

3、2、1秒前 、映像復活!!!(奇跡のギリギリセーフ!)

オンエアー

「現場にいる〇〇さ~ん!」

2時間枠の全国生放送のワイドショー内での生中継でした。
番組の中で何度も中継が入る予定でしたので真っ黒な映像がオンエアされなくて本当に良かったです(汗)

無事に終了はしたものの
その後、何事もなかったかのように社に帰りましたが。。。

その時、失敗して映像が切断されて、放送事故になっていたら、
今の自分はなかったでしょう。(社としてのスポンサーほか関係団体への損害が大きく)

皮肉なことを言うと

もしかして、反ってもっと早く、
電気主任技術者の仕事が出来ていたかもしれません。
今の仕事の方が、人の命につながる大事な仕事だと思います。

 

こちらのお話しは、中継業務の中のほんのひとコマです。

まだまだお話しするとスポーツ中継(野球中継、サッカー中継、ゴルフ中継など)、
報道中継でも面白かったこと失敗談などいろいろありますがお後がよろしいようで。

ではまた。

次回は山での生中継の話です。
よろしかったらご覧ください

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