アンテナと空中線電力の話

中波AMラジオ局のアンテナ高さ約150mくらいあります。
なぜでしょう?

私が当時の運輸省航空局から転職して入社した地元の
A放送局(後に再び東京の放送局に転職)の周波数は765kHz。

入社後すぐに中波AM送信機の研修に行きました。
場所はNHK放送技術研究所。
なんと研修参加者は私一人で、NHK放送技術研究所に
泊りで1週間。
講師の方とマンツーマンでみっちり研修しました。

講師は大手メーカー出身の方だったような?
NHKの方だったような?

 

NHK放送技術研究所はテレビのその昔、6メガ、7メガ
論争をしたところらしいです。

帯域幅の話で、何しろ日本の放送の最初のところです.
6メガに決着がつきました。
良かった事なのです。
ここは今も8K放送、16K放送、もっとその先の放送を
研究している放送技術の最先端です。
今は地上波は4K放送、BS/CSは8K放送をやっています。

NHKは昭和28年に日本で最初に放送を開始。
NHK放送博物館にその当時の放送機が展示してあります。

となりに愛宕神社があり、確か、ほおずきの中継を大雨の
中でしたことがありました。
その隣がNHK放送博物館だったのです。
ついでに見学しました。

中に日本で最初の放送機が展示してありました。
外国製です。
確かアメリカ製のコリンズとかです。
違うかもしれません。

飛行機の無線機器を作っていた、もっと言いますと戦闘機
のそれを作っていた会社です。
日本での一号機は外国製だったんだ~と思いました。

本題に戻ります。

リスナーが765kHzにチューニングしたとします。

電波(電子)は空中に放り出すのに(専門用語で輻射と言います)
1秒間に765000回(765kHz)アース(地面)と高さ約150m先端までの間を行き来するのです。

もっと簡単に言いますと、

放送機から電子が出て、空中線(アンテナ)の先端
まで行って、アース(放送機)まで帰って来るのに、
150m必要なのです。

行って帰って来るのを1サイクルと呼びます。
この1サイクルは、1÷765kHz(765000)=0.0000013秒
かかっているわけです。

つまり、

765kHzの電波を空中に放り込んで(輻射)リスナーに
ラジオ聞いてもらうには、電子が150mの高さのアン
テナの中で行き来しいるのです。

長々枝葉の話に飛びましたがここでやっと記事冒頭の

中波AMラジオ局のアンテナ高さ約150mくらいあります。
なぜでしょう?

に戻ります。

そう、上記の理由で150mの高さが必要なのです。
脱線が長すぎてすみませんm(__)m

 

またまた余談ですが、当時はJR中央線の竜王駅近くに
ラジオ局がありました。
地元A放送局発祥の地です。
そこに昔のアンテナが立ってました。
ステー引っ張り型の従来のアンテナです。
ステー引っ張り部分は、ご近所の田んぼの中です。
今はありません。

放送機は、真空管式でした。
本命・予備機のAM送信機があり、保守・点検しました。
いま跡地はどうなっているのでしょうか?
気になる所です。

 

今現在は、高速の双葉サービスエリア付近に移転してます。
当時ラジオ局移転に携わり、アンテナの工事も見てました。
基礎にとても大きな石があり、工事屋さんが撤去するのに
苦労していたのを憶えてます。

現在のアンテナは確か「自立型折り返しかご型アンテナ」
と言う名前があったような。
もっと少し書きますと、6面体の形で、(上から見ますと6角形)
1面体に2本アンテナが長さ150m、合計12本あるのです。
ここから折り返しという名前になってます。

これがアンテナで、立っている鉄塔はアンテナではありません。
ご近所の方がおられれば、中には入れないですが、柵の外側
で確認できるかもです。
ご興味がある方は見てほしいです。

こちらの鉄塔は下世話な話、アンテナだけで数億円だと記憶
してます。
高いか安いか?
どちらでも良いですかねー。

先程アースと書きましたが、アンテナの周りには地面に
アース線が放射状に埋め込まれてます。
これがないと空中に電波が飛びません。
飛ばないというよりは、効率が悪くなって遠くまで飛び
ません。
アンテナ効率と言いますが、もうかなり忘れてしまって、
興味が薄くなって来ているので止めます。

この電波に乗って地元の名物女性アナウンサーさんが

「県民の目です耳です◯◯放送です」

と県域に、
そして夜間は(中波は夜間に遠くまで飛ぶ性質がある)
全国に流れるのです。

こちらの女性アナウンサーさんとは今でも年賀状のやり取りを
しています。
久しぶりにお会いしたいです。
今は定年退職されたようです。
本当に長い間お疲れさまでした。
こちらの方は誰にでも慕われる方なのです。
先輩ですが、敢えて書かせていただきました。

 

確か山口県の放送局が同じ765kHzで、夜間に混信調査に
出掛けました。
昔の三冨村の民宿に泊まり込んでの調査です。

その放送局のクロージングがKRY山口~と音楽を流して
停波をしたのをのを憶えてます。
停波させて、765kHzに、何もないところに海外の電波が
混信してないか調査するのです。
海外から飛んで来てるんだなこれが~
何語だからも分からなかったのを憶えています。

空中線電力

空中線電力というのがあります。

先程のアンテナから電波が飛ぶ場合、空中に放り込む力
が必要です。
これが空中線電力です。

A放送局と前述のKRY山口放送局は5kWです。
これが多ければ多いほど空中に電波が強い力で放り出され
るのです。
しかし制限は決められてます。

日本で一番大きい空中線電力の放送局はNHK久喜放送局。
なんと500kW!
A放送局、前述のKRY山口放送局の100倍です。
遠くでアンテナだけ見たことがあります。

 

ここまで大電力ですと使用する電気(もちろん高圧引き込み)
もとてつもなく大きいはずです。

空中線効率を良く見積もって仮に80%として
500000W÷0.8=625000W が必要で、
放送機(送信機)効率を仮に良く見積もって
50%だとしても、
625000÷0.5=1250000W
1250kW

分かりずらいので、ご家庭の100V換算で
12500A必要です。
更に分かりずらいので、
ご家庭60A契約 でフルに電気を使用したとして、
12500÷60=208→210軒分ぐらいの電気が必要。
ご家庭でフルに使うことは冬場しかないので、30Aぐらい
として210軒の2倍で約400軒分ぐらいでしょう!

 

たったこれだけと思われるかもしれませんが、
1放送局一つだけで、住んでる地域の自治体一つか2つか
3つ分くらい、電気使用量があるんですよ!

高圧電気に携わる者としては、とてつもなく大きすぎます。
これはあくまでも仮の話ですが、本当はもう少し安全率を
見ます。

1250kWと書きましたが、経験上安全率は50%で更に50%
を見込んでますね。おそらく。
従いまして、
1250kW÷0.5÷0.5=5000kW必要

なにせ国営放送の災害用の要の放送局ですから、電気代
うんぬんなんて言ってられません。
専門的に言いますと、おそらく特高(特別高圧)引き込みか
なと思われます。

6600Vの上で2万Vかな。
わたしのような電気主任技術者が常駐でいるはずです。
また警備員の方、放送機(送信機)を保守する方々が常駐
のはずです。

大電力増幅器の部分だけを除いた部分を、無停電化してい
ると思われます。

コマーシャル電源の東京電力が落ちた(来なくなった)場合、
おそらくですが、東京電力の特別高圧の電線は本命・予備
の2ルート確保しているでしょう。

東京電力の特別高圧が来なくなった場合、非常用発電機で
補います。

かなり大きな発電機が何台も確保されているはずです。
瞬間停波無しのバッテリー構築は、規模が大きすぎて出来
ないかもしれません。
バッテリーが何台も必要で、保守点検が大変、瞬間停波は
やむを得ないかな。

切り替えに発電機立ち上がりから電圧確立して、電源を確保
します。
消防法では、一般自家用工作物で、40秒以内とされています
が、これでは時間がかかりすぎです。
今の技術ではどの位の秒数で切り替わるのかな?
一般工作物非常用発電機では、切り替えに10秒ぐらいです
が、最近では何と2秒で切り替わってます。

技術は、まさに日進月歩といったところでしょうか。

施設公開してないかな?
見てみたいです。

ではこの辺で
ごきげんよう